2018年12月16日

ZOZO前澤を口説いた男が挑む「地方で給料を諦めない」働き方改革

ZOZO前澤を口説いた男が挑む「地方で給料を諦めない」働き方改革

 【備忘用】
 イーコマース(EC)関連のシステムサービスを展開するZOZOのグループ会社、アラタナ( https://www.aratana.jp/ )社長、濱渦伸次氏。
 販売・開発拠点は宮崎市。アラタナの社員は120人ほどいるが、9割超のメンバーが宮崎で勤務。

 ZOZO前澤を口説いた男が挑む「地方で給料を諦めない」働き方改革


 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58301?fbclid=IwAR1Cm7YUithJJxY2mZXemZowhx3dCKkwuJGmqXqBZaSbLmCPjCI3O-DS_xc

 
 ZOZO前澤氏に「地球は本当に狭いよね」と言われて…

 民間人として初めて月に行くと突然ぶちあげたかと思えば、みずからの納税額がウン十億円であることをツイッターで暴露する……。そんな規格外の男・前澤友作氏が率いるZOZOだが、じつは会社全体に目を向けると前澤社長に負けずらずの規格外の人材が少なからずいることはあまり知られていない。
 アラタナ社長、濱渦伸次氏はその一人。アラタナは、イーコマース(EC)関連のシステムサービスを展開するZOZOのグループ会社。もともと濱渦氏が起業した会社だが、4年前に濱渦氏自らが前澤社長を口説いてZOZOグループに参画した経緯がある。
 そんなアラタナの特徴は、ZOZOグループの一員でありながら、宮崎県宮崎市に本社を持つ地方企業であるということにある。
 顧客は東京のアパレル、小売り企業が中心だが、販売・開発拠点は宮崎市。現在、アラタナの社員は120人ほどいるが、9割超のメンバーが宮崎で勤務している。文字通りの「地方企業」なのである。
 ビジネスの中心は東京にあるのに、地方のハンデキャップを感じることはないのか――。こう質問すると、濱渦氏からは意外な答えが返ってきた。
 「前澤がグループ会社の社長全員をプライベートジェットに乗せて、ニューヨークへ日帰り出張をしたとき、機内で発した一言がいまでも忘れられないんです。前澤はそのとき言ったんです。『一日でニューヨークと東京を往復できるなんて、地球は本当に狭いよね』、と。
 僕はこれまでずっと『地球は広い』と思っていたのですが、その一言を聞いた時、ものの見方が一気に変わってしまった。『地球は狭い』と思えば、たしかに東京と宮崎の距離って何の意味もなくなってしまうじゃないか、と。そうしたら、地方にハンデがあるなんてまったく思わなくなったんです」(以下、発言は濱渦氏)
 
 東京と地方で給料が違うって、おかしくないか?
 濱渦氏は現在、日本中から最高レベルのシステム・エンジニアを宮崎に集結させるという目標を掲げている。そのためにこだわるのが社員の「給与水準」だ。
 実際、アラタナでは、宮崎市で働いても東京で働くのと変わらない給料水準を確保。地方でも給料をあきらめない働き方を実現させている。
 濱渦氏はその「狙い」をこう語る。
 「よく地方創生のためですかとか聞かれるんですが、そういうつもりはありません。宮崎にこだわっているのは、自分が宮崎出身で宮崎で起業したからであって、地元のために貢献したい気持ちはもちろんあるけれど、それは会社が成長して結果として貢献できればいい。
 ただ、地方で給料をあきらめる働き方については変えたいと強く思っていました。地方で働くということになると、地方は生活コストが安いから給料が安くてもという言い訳をしがちで、確かに地方の給与水準は東京より低いという現実がありますよね。でも、僕はこれは間違っていると思うんです。東京で働いても、宮崎で働いても同じような仕事ができるんだから、給料も同じでないとおかしい。
 むしろ、宮崎は生活コストが安いうえ、給料も高いということになれば最高じゃないですか。それならそれを自分たちが実現しよう、と。だから新卒初任給は、東京のそれと遜色ない25万円に設定しています。将来的には全社員の10%を1000万円プレイヤーにもしていきたい」
 そんなアラタナの社員には、サーフィンのできる宮崎にあこがれて首都圏からIターンでやってきた人もいれば、宮崎出身でUターン就職した人、地元宮崎で育ってそのままアラタナに就職した人もいる。
 「社員が宮崎で働くことが好きすぎて、ここを離れたがらない。東京に転勤する人を募ると、嫌がるんです。笑い話のようですが、これは新たな問題ですよね」
 そう笑う濱渦氏だが、これを実現するまでには試行錯誤の連続だった。

 就職口を求めて福岡や東京へ出ていった友人たち
 そもそも宮崎は古くから「陸の孤島」とされてきた。九州の中核都市の福岡から宮崎へは、交通の便が悪く、高速道路では熊本を迂回する必要があるし、鉄道を利用しても、いったん鹿児島まで南下せねばならず、どちらも4時間近くかかる。
 地元の民放テレビ局は2局しかなく、東京、福岡に比べて、圧倒的な交通格差と情報格差を強いられてきた。
 濱渦氏はそんな宮崎で育ったが、友人の多くは福岡や東京に就職口を求めて宮崎を出ていった。
 「ぼくは地元の都城高専を卒業しましたが、40人のクラスのうち、宮崎に残ったのは僕ともう一人だけでした。その2人で起業したのがアラタナです」
 こう語る濱渦氏も、当初は県外に出て就職している。04年、リコーに就職。GRデジタルのカメラをつくりたかったが、配属先はコピー機の部署。その辞令が下りたその日に辞表を出して、翌日には宮崎に戻ってきた。
 思ったことはすぐに行動に移す。宮崎に帰ってからは「モテたい」という動機で、カフェ・バーを開業したが、半年で倒産。21歳にして1000万円の借金を背負った。

 地方の無名企業はいかにして優秀な人材を集めたのか
 当時は消費者金融からの借り入れでグレーゾーン、いまでは違法の27%という高金利。
 アルバイトをしながら雌伏のときを過ごした。
 「地元の商店街のアパレルショップでアルバイトしました。そんなある日、バイト先のオーナーに『ネットショップをやってよ』と言われて作ってみたところ、かなり儲かった。このとき、やがてECの時代が来るということを肌で感じたんです。
 ECを全国のショップに広げることができれば、必ず成功する。これがアラタナを起業したきっかけです」
 そう確信した濱渦氏は07年に「アラタナ」を起業。
 ECが何かほとんど知られていない時代、予想は的中して、営業マンがどんどん仕事をとってきた。嬉しい悲鳴だったが、そこで人手が足りないという問題に直面。増え続ける需要に、エンジニアの人材確保が追い付かない状況に追い込まれた。
 とはいえ、IT系企業の集積のない宮崎で、どう人材を確保するのか。ましてや一般の人にとってアラタナは当時、海のものとも山のものとも知れない会社である。そのとき濱渦氏が取った「奇策」が、宮崎のハンデキャップを逆手に取ったテレビCM戦略だった。
 「宮崎には民放が宮崎放送(MRT)とテレビ宮崎(UMK)の2局しかありません。そのため、宮崎では東京で流行りの番組をリアルタイムで見ることが難しいのですが、逆に宮崎の人に向けて広告を打つ側からするとうってつけなんです。なにせNHKと合わせても3局しかないから、宮崎県民の視聴率はどの局も高い。しかも、地上波CMが1本約1万円で打てるほど安い。これを使わない手はない、と思いました。
 ターゲットは宮崎の新卒の学生や、Uターンを希望しているエンジニアやその家族たちです。特に帰省しているお盆や年末年始がねらい目。大みそかの深夜にお笑いの『M‐1グランプリ』を放映するというので、ここにバンバンCMを打ちました。
 まだアラタナの売り上げが1000万円にもみたないときでしたが、地上波テレビでCMを出している会社として一気に信用度がアップ。以降、内定辞退も減り、首都圏からも人材が入ってくるようになりました」
 ましてや提示される初任給は他の地元企業では群を抜く25万円。さらに生活コストの安さを考えれば、東京よりも生活水準は格段に高くなる。ここに温暖な気候風土の魅力が加わり、良質な人材が集まる決め手となった。

 地方企業だからといって安く受注してはいけない 
 こうして見てみるとアラタナは宮崎のハンデを乗り越えたというよりは、むしろ宮崎の利点を活かしたというほうが正しいのかもしれない。
 そしていま、アラタナは地方に雇用を生む「地方創生企業」として注目されるようになっている。だが、濱渦氏は「それはちょっと違う」と言う。
 「地元に貢献したい気持ちはあるけど、ぼくは宮崎で起業するしかなかったのが現実だし、それだけに宮崎の利点を活かしてビジネスをやってきただけです。
 ただ僕がいま残念に思うのは、企業誘致の考え方です。誘致される企業も、誘致する行政も宮崎を安く見ている。生活コストが安いことや賃金が安いことに、会社も行政も甘えてしまっていては、いい人材は宮崎に集められないし、誰も幸せになれないと思うんです。
 いま東京の企業が、地方企業に外注することを〝ニアショワ″というけれど、地方の企業を経営する僕からすれば、この言葉は胸に突き刺さる。アラタナの顧客は東京の企業が9割ですが、僕は宮崎の企業という理由で、安く受注することはあり得ません。本当の地方創生を語るなら、目指すべきは『宮崎で給料をあきらめない働き方』であるはずです」

 経営者・前澤友作が教えてくれたこと
 2015年3月、アラタナはZOZOグループ入りした。前澤社長との出会いは濱渦氏の大きな転機となったという。
 「起業家が魅了される起業家、それが前澤友作です。ZOZOグループの中には、たとえば元『ヤッパ』(現・ZOZOテクノロジーズ)の創業者の伊藤正裕さん、『VASILY』(同前)の創業者の金山裕樹さんほか、いろんな創業者が集まっている。起業家のダイバーシティですね。創業者のメンバーでふた月に一度、誕生パーティを開くのですが、『ZOZOUSED』の社長の宮澤高浩さんが和太鼓をたたいてくれたりする。パーティでは仕事の話なんかしないで、好きな音楽を聞いて、好きなミュージッククリップを観て、アートの話ばかり。我の強い創業者を束ねられるのは前澤くらいしかいない。
 僕もZOZOタウンのシステム倉庫『ZOZOベース』を見たとき、前澤と一緒にやりたいと思ったんです。仕事柄、数えきれないほどの倉庫を見てきたけど、ZOZOベースは世界一の倉庫だと思いました。無味乾燥で暗いイメージの倉庫だけど、ZOZOベースはとにかく明るい。そこら中にアート作品が飾られて、働いている人もみんなお洒落で楽しそうに仕事をしている。これを見て、『ぜひ一緒にやりましょう!』と前澤に言ったんです」

 アラタナがZOZOに合流してから3年半。
 濱渦氏は被買収企業の経営者が職務を続ける義務のあるロックアップ期間をすでに終え、いつでも新しい道を歩むことができる。
 「でもまだまだ前澤と仕事がしたい。前澤は小さく儲けようとはせずに、大きく儲かるビジネスしかやらない。最新のコンセプトでサービスを提供して、圧倒的に勝ちに行く。スケールを大きく描いて志を高く持たないと、誰も幸せにできないんだなと、前澤に思い知らされました。
 たから僕はもう宮崎と東京に垣根はないと思っているんです。これから月に行くという人と仕事をして、その人から『地球はせまい』と言われたら、もう宮崎とか東京とか言っている時点で、かっこ悪いでしょ」
 「地方創生ベンチャー」と呼ばれるIT社長は、すでに地方と東京がフラットになった世界に生きていた。


 

  



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