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2019年08月06日

【備忘用】大牟田市庁舎について、松岡恭子さんから。



【備忘用】
 先日、ご縁ができた、高校の後輩、松岡恭子さん( https://www.facebook.com/kyoko.matsuoka.54 )からです。
 大牟田市庁舎についてです。ネット署名もできます。
https://omuta-honkan.org/

 https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10157374063009105&set=a.10150291064899105&type=3&theater

 以下、松岡さんのfacebook の投稿からです。

 大牟田市庁舎について産経新聞に書きました。コンディション良いこの建物を「残すか残さないか」ではなく、「使い続けるにはどうすれば良いか」から大牟田の未来を考えてみるべきだと思います。
こちらからネット署名もできます。
 https://omuta-honkan.org/

 https://www.sankei.com/region/news/190805/rgn1908050016-n1.html

  ■舎まちづくりの初めのボタン

 ちょっとくたびれて見える人物が、髪形と服装を整えると見違えるほどすてきになるシーン、映画などでおなじみですね。福岡県大牟田市庁舎本館を訪ねたとき、すぐにそれを連想しました。昭和11年竣工(しゅんこう)、市を貫く国道に面して堂々とした佇(たたず)まいを保ち、大牟田駅からもほど近い、まさにランドマークです。中心にそびえる塔屋は5層もあり、その両側にシンメトリーに伸びる建物は63メートルに及び、中央玄関の車寄せの屋根は奥行き深く、全体的に造詣的な印象が深い建築です。かつては、表面に線上の凹凸をつけたスクラッチタイルが外壁に張られていたそうですが、残念ながら剥落の恐れから取り外されています。背後には戦後建てられたいくつかの分館が控えています。

 1階は半地下になっていて、最上階の4階への階段も気分的には3階に行くような感じで、エレベーターがない建物の工夫だと思われます。その4階には、かつて式典などを行った正庁(大広間)や貴賓室だった部屋があります。正庁は柱頭や梁に加え、舞台だった場所の背面壁も手の込んだ漆喰(しっくい)飾りで縁取られ、正面性を演出しています。貴賓室のマントルピースの上部を飾るイスラム風のアーチもユニークで、これらが特別な部屋であったことがわかります。最も良い状態で使われているのが議場です。直線的で背筋が伸びるような厳格な印象を与えつつも、よく見れば梁下面に華麗な彫刻が施され、2階の傍聴席バルコニーの描く緩やかなカーブによって優雅さも併せ持っています。


 戦中の空襲も生き延びたこの建物が、80余年を経て少々くたびれて見えるとしても、建物の骨格や特徴ある装飾はよく保存されています。美しい梁を覆ってしまっている新建材の天井を取り除き、物品を移動させるなどして少し整理すれば、かつて石炭産業で大いに栄えた往時の姿が蘇り、市民にとっても誇らしい場になることでしょう。しかし現在大牟田市は、この建物を解体し建て替える方針です。

 本建物は平成17年に大牟田市の申請により国の登録有形文化財に登録されています。国の登録有形文化財は「国宝・重要文化財」に準ずる制度ですが、福岡県にある国の登録有形文化財の建造物の約半分は住宅関連が占め、官公庁舎は門司区役所(旧門司市役所)と本建物のみです。全国でも、現役で使用されている公共建築で登録が抹消された事例はありません。また「明治日本の産業革命遺産」として国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録されたエリアのひとつが三池炭鉱・三池港であり、当時の繁栄を象徴する建造物のひとつがこの大牟田市庁舎本館であることに異論がある人はいないでしょう。


 老朽化から「庁舎が備えるべき機能」への対応性が低いとし、それを理由に建て替えを進めるのは「初めのボタンを掛け違えている」と私は思います。バリアフリー化や災害時の拠点機能を求めればこの建物では当然無理があり、そこから解体、建て替えという検討フローへと進んでいってしまいます。まずは、この歴史建築を利活用することを始まりに置いて、フローを組み直してみるべきです。一度失った建物は、二度と戻ってくることはありません。次世代型の公共の場をつくる挑戦、アートなどの文化創造や新ビジネスの起業を育む場、観光者も参加できるコミュニティースペースなど、古い建物を活かした取り組みは全国でも多彩です。どのように活用できるのか知恵を凝らしていくステップは、大牟田のまちづくりに新しい扉を開いてくれるでしょう。なぜならそれは「機能」の追求ではなく、どんなまちにしていきたいかという「思想」を組み上げるプロセスだからです。大牟田市で今起きている、建て替えたいという市の思惑と、残したいという市民の気持ちの間のずれは、前提を設定する段階から生まれていると思います。まちづくりにおいても、身なりを整え、きちんとボタンをかけていく手順が大切なのだと気づかされます。


 大牟田市の現在の人口は、昭和30年代のピーク時の約半分です。市民へのアンケート結果からは、利便性が高い立地で各種手続きを済ませられるバリアフリーな市庁舎が求められているということですが、今は証明書などの入手もオンラインやコンビニでのサービスが広まる時代、また各種問い合わせもAIによる対応が間近な時代です。そんな中、市庁舎に求められる機能や規模もこれまでのものとは変わっていくでしょう。もう一度遡(さかのぼ)って、市庁舎建て替えではなくまちづくりのための検討フローを描き直すことが、未来の大牟田市のために重要だと思います。

                   ◇

【プロフィル】松岡恭子

 まつおか・きょうこ 昭和39年福岡市生まれ。福岡県立修猷館高校、九州大学工学部卒。東京都立大学大学院、コロンビア大学大学院修士課程修了。建築家。設計事務所スピングラス・アーキテクツ代表取締役および総合不動産会社、大央の代表取締役社長。建築の面白さを市民に伝えるNPO法人「福岡建築ファウンデーション」理事長も務める。

  


Posted by 飯野健二 at 19:47Comments(0)修猷館高校